宮口幸治 著書
「ケーキの切れない少年たち」(新潮新書)
とても面白く、すぐに読み切りました。
精神科医である著者が少年院で出会ったこどもたちのエピソードを基に、様々な知見から理解していくもの。
僕も児童相談所で働いていたこともあり、少しリンクする部分、「わかるわかる」という部分もあったため、興味深く読めました。
やはり、ここ最近、自分も興味を持っていたのですが、改めて感じたのは
勉強以前に重要なことがあるということです。
やはり、脳機能、認知機能にまずは重点を置くべきでしょう。
見るチカラ、聴くチカラ、わかるチカラなどの脳機能が鍛えられていないと、世界が歪んで見えます。
ただ目が合っただけでも、「にらまれた」
ちょっと横で話をされたら「馬鹿にされた」
など。
それに、自己感情の理解も重要でしょう。
放デイにいたころに、よく「つい手が出てしまう」という相談がありました。
児相にいた頃も、つい手が出るこどもたちはよくいました。
そういった子たちは、手を出した理由をほとんど決まって「イライラしたから」と答えます。
この本にもありますが、まさにその通りで、感情表現をイライラしかほとんど知らない子が多いんです。
なにかにつけてイライラする
暇でもイライラ
不安でもイライラ
焦っててもイライラ
すべてそれで表現してしまいます。
僕がやったのは、その感情認知のサポートでした。
手を出した後、「いや、だってね・・・」と言い訳をはじめたら、自己感情認知が少しずつできるようになっている合図に感じていました。
自己感情の認知がうまくいかないと、自分が何を見て、聴いて、どう感じたかを説明できず、
そうなると、本人はどこの能力に苦手さがあるかも分析できません。
また、なにかしらの能力が低かったり、自己感情の理解ができていなかったりすることにより、怒られる経験が増えると、
セルフイメージが悪くなっていき、
いわゆる自己肯定感の低下が見られるようになります。
この本の著者は自尊感情が低いというより、現実と乖離していることが問題と指摘しています。
つまり、
なにもできないのに、できると思っている
なんでもできるのに、できないと思っている。
と。
確かに、セルフイメージが実情と離れているのはもちろん、
変なこだわりというか、固定概念が適切なセルフイメージを獲得するのを阻害しているようにも感じるときがあります。
「ちゃんとできないとだめ」
「最後までやらないとだめ」
など
そんなこだわり捨てて、ちょっとやってみようくらいでやればいいのに
そういうこだわりや固定概念が経験上蓄積されていると、
新しい一歩が踏み出せず、
結局、自信が持てずに、セルフイメージが低く評価されるという・・・
要は、こどもが自分自身を、周りがこどもを本当に適切に理解しているのかという問題が1点と
適切に理解したうえで、成長できるように必要な栄養(教育や環境整備など)を与えられているのかということは重々、日ごろから見直していくべきかもしれません。