気づけば、こどもと関わる活動をはじめて約10年が経過しようとしています。
10年も続けるとさすがにいろいろなことを知ることができました。
いま思うと、たくさんの失敗や間違いを繰り返してきました。
いまの知識や経験を持っていれば、過去のこどもたちにも、また違った関りができたのかなと思うことも少なくありません。
10年間の支援活動で思ったことや感じたこと、学んだことを少しずつまとめていきたいと思っています。
いま、支援活動をしていて、正直に感じるのは無力感です。
現在進行形で関わりながら、本人と僕のサポートがうまくハマっている子は、本人のペースなりに前進しています。
しかしながら、全ての子がそういうわけではなかったという事実もあります。
こどもは環境のなかに存在します。
いや、大人も含め、人は全員、環境のなかに存在します。
どのような環境にいるかというのが人それぞれが持つ力をどう伸ばすかということにつながります。
遺伝的に何かしらの才能を持っていても、それを開花させる環境にいなければ、力を発揮することはできません。
僕が会った瞬間の子は、なにかしらの才能や力を持っていても、なんらかの理由で発揮できていなかったり、自分の力に諦めていたりしていることが多いです。
それは、その子がそうなるまで属していた環境が大きく影響しています。
「できないことはダメ」
「できて当り前」
「嫌なことでも最後まで頑張るべき」
「途中で辞めるなんて中途半端だ」
「他の子と比べてやっていない、できていない」
「言われたことだけやる」
「勝手にやらない」
などの声掛けによる傷つきや間違った文化の習得
また、属している環境が目標を持つことや学ぶことへの価値の理解を充分にしていない。などです。
間違った文化の習得をしていると、まずはその子へのアプローチうんぬんというよりも、その文化の修正を行っていかなければなりません。
しかし、もちろん、「その考え方は間違っている」などと言うわけにもいきません。
特に心に傷があったり、心のエネルギーがなくなっていたら、生きているのもやっとです。
間違った文化により、自己肯定感が著しく低下し、無気力になっている状態であれば、まずは『自分が自分を責めている状態』から抜け出すことが最優先です。
しかし、ジレンマのようですが、間違った文化が半永久的に無意識から自己肯定感を下げてきます。
つまりは、間違った文化を修正するために、間違った文化からくる影響を最小限に抑えつつ、本人の心のエネルギーを回復させる。というのが第一段階です。
なんとかエネルギーが回復してきたら、間違った文化の修正に入らないといけません。
途中でやめることや、完璧にできなかったことを指摘される文化にいた子は、新しいことを始めることが難しいです。
「完璧にできないかもしれない」「やり始めたら途中でやめれない」という不安を持つためです。
できないなら、できないでもいいし、向いてないなら辞めればいいと考えられません。
人と比べることも常態化しているので、「人と比べて自分はどうか」という価値観しか持てていない。
となると、自分に自信を持つなんて到底無理です。
ネットが発達し、世界中の人とつながれる時代、絵やゲームなどをとっても上には上がいます。
間違った文化を教えこんだ人たちが「ごめんね、間違っていたよ」と言ってくれれば早いですが、まず無理ですし、
ほとんどの場合、誰か一人が教えこんだというわけではありません。
社会全体の雰囲気だったり、大人の言葉にしない期待から読み取ったりと様々です。
となれば、これまで縛られていた大人や社会の像から解放されなければなりません。
これは大人でも難しいことです。もちろん時間がかかります。
また、例えば友達や家族など、その中に目標を高く持って活き活きと生きている人や、日々、楽しんで【学び】をしている人がいるかどうかも大きく変わります。
自分の目標に向かい活き活きと生きていたり、勉強の価値を理解し、ポジティブに自分の学びとして勉強しているモデルがいれば、こどもたちも〈生きる〉〈学ぶ〉ということにポジティブになれます。
しかしながら、そう簡単ではありません。
大人も余裕がない世の中です。なにごともポジティブに活動するというのは簡単ではありません。
先ほどからいう間違った文化というのは、時代が変わればそうではありませんでした。
その文化が正しい時代があったのです。
ただ、もう時代は変わってきています。
こどもたちは間違った文化を学び、傷つけられ、ネガティブな環境にいることにより、気力もそがれていく。
そこに対するアプローチを行いますが、間違った文化を教えこむ大本が変わらない、ネガティブな環境が変わらないなどがあると、行っているサポートが充分に効果を発揮しない時もあります。
こどもの変化は、まず環境の変化から始めていかなければなりません。
人は自分の体に足りていない栄養分を食べるとき、より「おいしい」と感じるのだとか
まさにそれです。
こどもも、必要な栄養分を与える環境にいることで、ぐんぐん成長していきます。
間違った栄養分や、間違った量を与えると、せっかくの美しい花が開花しないかもしれません。